奥様のひとりごと~ヤクルト編③~

ひとりごと

いつの間にか、社長との面談が始まっていた。
「面接と思って、かしこまって答えなくていいから、
お仕事体験の感想を教えてください」

「はい!とても楽しかったです!!!」
小学生のような回答をしてしまった。

社長は一瞬目を丸め、驚いた表情をした。
「え??楽しかった??」

先輩ヤクルトレディについて行っただけなので、
特に私は苦労もしていない。
楽しい以外に、何もない。
たったこれだけで、4000円ももらえるなんて、
むしろ美味しい仕事だ。
お金の計算や、道を覚えるのは苦手だけど、
それもなんとかなると思った。
私の考えは甘い。

まさかの即決採用?ヤクルトレディになれるの?

社長「〇〇市に、行ったことはありますか?
実は、そのエリアがちょうど空いていて、
よければ配達をあなたに任せたいと思っています


(え?行ったことはあるけど…面接もなく配達エリアは決定なの?)

私「はい、ぜひ!よろしくお願いいたします」

よく考えて答えればよかったのだが、社長を目の前にしているので、
私もつい、軽い返事をしてしまった。

もしかして、これって、面接なのでは?
よくわからないままに、採用になったのか?

色々と謎が多かった。

社長「実は、明日から研修がはじまるので、
参加できますか?」

(え?明日???随分と急な話だな)

私「あ、はい。大丈夫です…」

社長「何か、質問はありますか?」

(もしも、仕事中に事故に遭ったら、
その時はどうなりますか?)

ネガティブな質問なので、聞けなかった。
後になって、この時に
もっと詳しく質問しておけばよかったと後悔した。
(※疑問点は、必ず確認した方がよいです)

私「…いえ、特にありません」

社長「そうですか…ご家族は、ヤクルトの仕事に、
反対されてませんか?」

私「え?反対ですか?特にないです」

社長「ご主人も?」

「はい、夫も『いいんじゃない?』と言ってます」

社長「そうですか…親御さんにも、一度相談してみてください。
意外と、親御さんが反対される場合があるんです」


(え??親が反対するの?なんで?)

私「多分問題ないと思いますけど…」

社長「研修中は、先輩が同行するから良いんですが、
ひとり立ちしてから仕事を辞められると困ってしまうので」

そりゃ、そうだと思う。
一応、研修を受けてみて仕事を続けるか考えることになった。
ただし、何も書類を渡されなかったので、
お仕事体験の続きなのか、採用されたのか不明だった。
口頭のみの説明で、不明点が多く不安になった。

親御さんが反対することが多い…どういうこと??

社長の言葉が気になった。

ヤクルトレディは、個人事業主。直接雇用ではない?

面接を受けて、企業に採用された場合、雇用契約を結ぶのが通常である。
事業主は雇用契約書や労働条件通知書を作成し、
従業員はそれらを確認して署名するのだが、
ヤクルトレディは違う。

色々と調べてわかったのだが、
ほとんどのヤクルトレディは直接雇用されておらず、
ヤクルト販売会社と業務委託契約を結び、

個人事業主として自分のペースで働くことができる。
販売会社によっては多様な働き方(雇用やパート)もあるようだ。

報酬は完全歩合制で、ノルマや在庫リスクもなく、
初心者にも取り組みやすい仕組みが整っているという。

ノルマはある?買取りはあるの?

しかし、本当にノルマがないのかというと、実態は違うようだ。

社内では「ノルマ」という言葉は使わないが、「目標」があるため、
実質的にノルマはあるのだと推察される。
時給ではなく、売った本数で給料が決まるので、やる気次第で給料が上がる。

「買取り」については、「ない」という人と、「ある」という人もいる。
実際の現場の声は異なるようだ。

なぜ買い取りが出るか、その理由としては以下の通りだ。

1. 不注意による商品破損
2. 販売数量の見込み違い
3. 賞味期限の管理ミス
4. 商品交換できなかった

商品破損、販売の見込み違い、賞味期限管理ミスなどはどうしても発生してしまう。
これを回避するため、販売数量の見込み違いが出た商品を
ヤクルトレディ同士で交換する、
商品交換を推奨しているようだが、
少なからず買い取りが出ているというのだ。

不注意で商品を破損させてしまった場合は仕方ないが、
雨に濡れてパッケージが破損した場合の買い取りなどは、
不可抗力に近いのではないかと思う。

なかなか、厳しい世界だ。

買い取りが多く発生した場合、
収入減はもちろん仕事のやる気も低下しそうだ。
暑さ寒さに耐えながら必死に働いても
大幅に収入が減れば、
何のために働いているのかわからない。


モチベーションが下がって、
自然と離職してしまいそうだ。

出典:ヤクルトレディのホンネ | ヤクルトレディ | 埼玉西ヤクルト販売株式会社|公式ウェブサイト

社会保険制度に加入できない!


業務委託で働くヤクルトレディは、会社員とは違い、
厚生年金や健康保険組合などの会社の社会保険制度には加入できない。

これは雇用契約ではなく個人事業主扱いであるため、
労働者としての適用対象外となるからだ。
そのため、社会保険料(年金・健康保険)の
全額を自分で支払い、
国民年金と国民健康保険にそれぞれ加入する必要がある。

会社員であれば保険料の半額は事業主が負担するが、
ヤクルトレディの場合は全額自己負担となる。
また、将来受け取れる年金額も
国民年金(基礎年金)のみとなり、
厚生年金よりも給付額は低くなる。

こうした点を踏まえて、将来設計を考える必要がある。
厚生年金が受け取れないのは、将来の生活を考えると少し不安になる。
長期に渡って働く場合、お金の管理はしっかりした方が良さそうだ。

出典:ヤクルトレディを始めるなら?個人事業主としての働き方をわかりやすく解説 | マネーフォワード クラウド確定申告

労災保険や雇用保険などの労働保険も対象外!

労災保険や雇用保険などの労働保険についても、
業務委託契約で働くヤクルトレディは適用対象外となる。

労災保険は労働者の業務上の災害に対する補償制度であり、
雇用関係にある従業員のみが対象となる。
ヤクルトレディは個人事業主の扱いとなるため、
業務中に怪我をしても公的な労災給付は受けられず、
仕事を辞めた場合も失業手当の支給対象にはならない。


ヤクルトレディの仕事を家族から反対される理由は、労災保険や雇用保険が適用されず、
リスクが大きいためではないのか。
だから、「親御さんが反対する」ということが起きるのだろう。
謎が解けた。

しかし、販売会社によっては、労災や失業手当に代わって、
業務中に事故で怪我をした場合のお見舞金の支給や、
退職金の積立もされているようだ。
販売会社によって
多少異なる可能性があるが、会社の保証制度については
事前に確認を取るのが良いだろう。

私は家族ともよく話し合った結果、
個人事業主として働くことに不安があったため、
ヤクルトレディの仕事は辞退させていただいた。
制服が可愛いから、という単純な動機では
飛び込めない世界だと思った。

過去にヤクルトレディとして働いていた知人の話では、

「ガードレールもない山奥を車で走って
本当に怖くて大変だった。
危ないから家族も心配していた」


「お客様は、良い人が多かった」

「退職後、失業保険がなくて困った」

「雪が降ると配達に行けなくなった」

「お届け商品が入っているボックスは
かなり重くて肩にかけるとよろめくほどだった」

「体力仕事のため、疲れすぎて帰宅後の家事は
全くできなかった」


「女性だけの職場で人間関係があまり良くなかった」


とのことだ。

ほかにも、ヤクルトレディの口コミには、以下のものがあった。

「天候に左右される過酷な仕事。お客さんは優しい人が多い」

「ヤクルトはエリアやセンターにもより、
マネージャーが良いマネージャーか、職場の雰囲気なども全く違う」

出典:ヤクルトのヤクルトレディのクチコミ:90件のクチコミ | Indeed (インディード)

まとめ

  • ほとんどのヤクルトレディは直接雇用されておらず、ヤクルト販売会社と業務委託契約を結び、個人事業主として働いている。
  • 販売会社によっては多様な働き方(雇用やパート)もある。
  • 社内では「ノルマ」という言葉は使わないが、「目標」があるため、実質的にノルマはあるものと推察される。
  • 商品破損、販売の見込み違い、賞味期限管理ミスなどにより、少なからず買い取りが出ている
  • 業務委託で働くヤクルトレディは、会社員とは違い、厚生年金や健康保険組合などの会社の社会保険制度には加入できない。
  • 労災保険や雇用保険などの労働保険についても、業務委託契約で働くヤクルトレディは適用対象外となる。
  • 販売会社によっては、労災や失業手当に代わって、業務中に事故で怪我をした場合のお見舞金の支給や、退職金の積立もされているのでよく確認すると良い。


ヤクルトレディの仕事は、お客様にヤクルトの商品や健康情報をお届けする、とてもやりがいがある仕事だと思う。

真夏には熱中症のリスクもある。
真冬には雪や道路凍結のリスクもある。
雨や台風の影響も受ける配達。

様々な困難を乗り越え、今日もヤクルトレディは
元気で明るい笑顔とともに、
あなたの住む街にもやってくる。

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